北星学園大学文学部英文学科二年生
茶木 香織

J-SOL4ヤングアンバサダー:大会後レポート

 8月20、21日。北海道でのJ-SOL4。私の人生を大きく変える瞬間が何度もあった。
 2日間が終わってみて、一番に感じたのは「大人のすごさ」である。大会参加以前、私が思い描いていたJ-SOLはどこかよそよそしく、ドライな空間だった。偉い大人が沢山いて、学会のように事例を発表し、堅苦しく意見を交換している空間。想像の中では皆一歩線を引いて交流している。その予想は、大会一日目午前中の特別ワークショップから覆された。
 普段ならお話することはもちろん、お会いすることすらなかったような方々が沢山いて、そして皆様が温かいのである。拙いこちらの意見もまるで親戚の一人のように辛抱強く聞いてくれた。どんな些細なことでも承認してもらえ、そしてどんどん掘り下げて新しい私を発見させてくれる。それがうそ寒くないのは、彼らが本気でこちらにぶつかってきてくださったからだ。こちらまで巻き込むような綺麗な笑顔で、聞いたこともなかったようなお話を次々に繰り出して私の眼から何枚も鱗を剥いでくださった。とほうもない私の野望にも理解を示してくれ、快く支援を申し出て下さり、大会終了後も温かいメールを何通も頂いた。何故ここまでして下さるのだろう。私が思っていた「社会の大人」とは全然違った。
 私が一若者として抱く日本の未来は、税金も高く高齢者が増え国民総生産も下がり子供達の学力も低下、技術最前線の専売特許は全て新興国に奪われ…薄暗くどんよりして憂鬱な倦怠感に満ちた世界だった。毎日眺めるニュースからも明るい兆しは感じられないし、政治家はまるでSFと正反対で、与する党以外の問題やその原因をあげつらい批判するだけで、実現可能な具体案を出すことも少ない。
そんな中で就職活動をして、働いて、お金を稼いで、生きて…社会に出て働く自分の未来は、どうにも魅力的に感じられなかった。出来ることなら一生学生でいたい、とさえ思っていた。
 けれど大会中、この人の下で働きたい、と感じた方が沢山いた。いや、皆様そうであった。自然に息をするかのようにSFを実行している皆様と接し、いつの間にか気負わずにSF思考へ踏み出せている自分がいた。私にとってのSFは自分と社会と世界を好きになれるものであり、未来を一緒に頑張りたくなる力を生んでくれるもの、そう思えるまでになった。
 大人って、凄かった。この人達は、本気で周りの人を、社会を、日本を変える気だ。そして変えられるに違いない。私も一緒に変えていきたい。SFの起こす変化はとても優しいのに力強い。明るく、世界が変わっていくだろう。伝えなきゃ、ではない。伝えたい、という気持ちに不思議となった。
 小さいころから、大人がどこか上から目線で発する綺麗事や道徳心が大嫌いだった。
今はスッと自分の中に落ちてくる。対等に接してくれる、同じ位置に立って会話してくれる大人がいる。本気で向き合ってくれる。そうしたら、自然と、綺麗事がしたくなった。道徳の教科書みたいな台詞を本気で吐きたくなった。
 社会に出るのも悪くない。早く、あの人たちと一緒に働きたい。そう思えた。社会に出る自分の未来がこんなに明るく見えたのは、中学生以降初めてだった。
もう一人のアンバサダー門脇真之佑君、そして同年代の参加者の方々からの刺激も大きい。私自身は幼いころからずっと、一人作業が好きであった。幸運にも最低限のことは一人でこなせる器用さに恵まれ、困ることがあっても大人や教師に訊ねこそすれ、同年代の手を借りることがあまり好きではなかった。大学に入ってから尊敬できる同年代も増え年下に影響を受けることも多かったが、一緒に何かをしてみたい、そう思える人はほとんどいない。
 けれど、今回出会った方々は違った。皆確固たる自分を持っていて、力強く生きている。学ぶことに貪欲で、自分をまっすぐ表現している。言葉を交わすたびにバシバシ刺激され、感銘を受け、嫉妬し、影響され、奮起して…。もっと話を聞きたい。そして一緒に行動させてほしい。共同で何か作り上げてみたい。すごいものが生まれる気がする。そんな感覚は初めてで、嬉しかった。大会中SFに包まれ、私自身のバリアが緩んでいたのもあるのかもしれない。これからはもっと、大学の仲間達とも新たな発見が出来るのだろうか。
 雲の上に居るようだった大会から下界に降りて1週間、大会の熱は未だ冷めない。先日参加した講演会では驚くほど沢山の質問が自分の中から生まれ、講師にぶつけることができた。東北へボランティアに行った友人の話をSF的に掘り下げてみたら、今まで知らなかった彼女の別の顔まで見えた。実のある話をたくさんできた。
 それでも前が見えなくなった時もあって、そういう時には最終日のフューチャーパーフェクト、あの時の未来が実現した感覚を思い出す。そうすると、また一歩踏み出す勇気が湧くのだ。

 来年のJ-SOL5、今度は誰かを刺激する側に回れるように、一歩一歩スモールステップで進み続けている。